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2009年4月

ティム・ゲナール「3歳で、ぼくは路上に捨てられた」

今日はこの本を紹介します。
青字は引用です。

3歳で、ぼくは路上に捨てられた Book 3歳で、ぼくは路上に捨てられた

著者:ティム・ゲナール
販売元:ソフトバンククリエイティブ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

一つのジャンルと言ってもいい、
“不幸から立ち直った半生の自伝”です。
元不良、元ヤンキー、元落第生、元ヤクザ、元ヤクザの妻、等々
いろいろありますよね。
そういう本にはあまり興味をそそられないのですが、
この本は、古本屋で妻が偶然見つけたので、読んでみました。
このジャンルで大切(?)なことは、
前半の不幸部分が、どれだけ不幸か、
どれだけとんでもない人生だったか、
ということでしょう。
それが絶望的であればあるほど、
後の立ち直りが鮮やかに見えます。
そういう意味では、この本はかなり鮮やかです。
帯からそのまま引用します。
母親の手によって電柱に縛り付けられ捨てられた3歳。
 父親に殴られ全身骨折。意識を失った5歳の誕生日。
 障害を負ったまま2年半の闘病生活を終えた7歳。
 病院に閉じこめられ、つらい思い出と闘った8歳。
 引き取られた家でも虐待され2度目の自殺を図った9歳。

帯はここまでですが、まだまだ不幸は終わりません。
少年院での教官による暴力とか、
少年院から脱走してホームレスになった12歳の時、
60歳の男に強姦されたり…。
そして、著者ティム・ゲナールは、
犯罪を犯す側、暴力を振るう側になっていきます。

かなりマッチョで喧嘩っ早い彼を、
その外見にとらわれず受け入れる人々に感動しました。
彼に最初にキリスト教を伝えた青年、ジャン=マリー。
彼をそのまま受け入れた、
(ジャン・ヴァニエとともに「ラルシュ(箱舟)」を創設した)
トマ・フィリップ神父。
彼の誕生日に、二日かけてタイプした5行の手紙をプレゼントした、
重度の障害を持つ少年フレデリック。
そして、彼に愛を告白した、
上流階級のお嬢さん」マルティーヌ(現妻)。
その他たくさんの人びとに、彼は何度も癒されます。

226ページの、
自分が誰かから無償の愛を受けたことに気づいたとき、人は絶望から解き放たれる。
という一文に、
この本が要約されていると思います。

「無償の愛」と言うのは簡単ですが、
実際に行なうのはおそろしく難しいことだと思います。
でも、
それを実行している人たちが実際にいるということが、
とても嬉しく、希望をもらいました。

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ロバート・N・ペック「続・豚の死なない日」は素晴らしい!

家の周りの田に水が入れられ、
蛙の声が日に日に大きくなっています。

今日はこの本を紹介します。
正編の内容に触れます。
続編の内容にも少し触れます。
青字は引用です。

続・豚の死なない日 (白水Uブックス―海外小説の誘惑) Book 続・豚の死なない日 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

著者:ロバート・ニュートン・ペック
販売元:白水社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


正編は、
父が亡くなり、
13歳の主人公ペックと、母、伯母の3人が
借金のある農場に残されたところで
話が終わりました。

この続編は、
一家を支えるべく、
学校も休んで農場の仕事をする
少年ペックが描かれます。
そこに襲いかかる、
旱魃による凶作、そして世界恐慌。

旱魃による凶作で
ペックの一家と周辺の農家は疲弊していきます。
ある日、ペック家の3人は、
カラカラに乾いてしまったトウモロコシのために、水を汲みます。
バケツ一杯の水で一本のトウモロコシの芽にたっぷり(p92)」と。
何度も何度も、日が暮れるまで、
誰も音を上げることなく、
丘の下の小川から、
バケツの水を運び上げる3人…。

伯母さんは
くたびれた縫いぐるみの人形のようにぐったり(p96)」して、
お母さんは
くすんで、灰のようになって(p99)」しまうほど働いたその夜、
ペックは
生まれてから今まで今日ほど神様に感謝したことはなかった(p95)」と思う。
母と伯母が寝た後、
ひとりで夕食の皿を洗うペック。
美しく、力強いシーンでした。

この小説は、正編、続編共に、
ものごとがどうしようもならなくなった時、
人生を自分でコントロールできなくなった時、
そんな時にも感謝することができる人びとを
描いていると思います。

そして、
厳しさ、寂しさと同じくらい、
ユーモアに溢れた、
素晴らしい本でした(特に続編)。
原文は知りませんが、
日本語訳の文章は簡潔で味わい深く、
心地よかったです。

主人公がシェーカー教徒というのも、
絶妙だったと思います。
以前、題名は忘れたのですが、
シェーカーの思想、
そこから生まれる家具や家、
生き方についての本を読んだことがあったので、
なおさら興味深かったです。

これを出版し続けている白水社にも感謝します。
古本で買ってごめんなさい。
Amazon.co.jpは便利ですね…。

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本田哲郎「釜ヶ崎と福音」

今日はこの本を紹介します。
青字は引用です。

釜ケ崎と福音―神は貧しく小さくされた者と共に Book 釜ケ崎と福音―神は貧しく小さくされた者と共に

著者:本田 哲郎
販売元:岩波書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


著者は大阪の釜ヶ崎で、
ホームレスの仕事と生活を「制度として獲得」するための活動をしています。
フランシスコ会日本管区の、元管区長であり、
新約聖書の翻訳も出版されています。

神は貧しく小さくされた者と共に(副題)」おられる、
ホームレスの労働者を通して神は働かれる、と著者は言う。
私たちが彼ら(ホームレスの人びと)を助けるのではなく、
彼らが、私たちを助けるのだと。
私たちがすべきことは、
貧しく小さくされた人びとを哀れむことではなく、
自分が彼らのように貧しくなることでもない。
彼らと連帯し、行政による施策を求めて実際に行動することこそが、
福音を広めることなのだ。
そのことを、聖書からも確認します。

実際に、行動に移すことの大切さを考えさせられました。
行動を起すことは、本当に難しい。
信仰とは、イエス・キリストが身をもって告げた福音に、信頼してあゆみを起すこと」であり、
やってみて、できたところまでが自分の信仰なのだと、イエスは示唆しているように思います。(p229)」
という結びの一文に、ドキッとしました。
著者は行動を求めます。
僕にとっては、それが新鮮でした。

ただし、違和感もありました。
著者が、自分は貧しく小さい側ではない、という立場から発言している点です。
わたしたちは、自分が貧しくも小さくもされてはいない者であることをわきまえ、(p177)」
貧しく小さくされている彼らと連帯して行動を(p177)」起せ、
とあるように、
読者は貧しくも小さくもない側の人間だ、という前提があります。
この本は、
自分は裕福であり、また、良いクリスチャンだ、
と思っている人向けに書かれた本だと思いました。
そういう意味では、僕向きではなかったです。

それでも、特に第Ⅲ部は、
実際に行動する時の心構えとして、
とてもためになると思います。

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ロバート・N・ペック「豚の死なない日」

今日はこの本を紹介します。
青字は引用です。

豚の死なない日 (白水Uブックス―海外小説の誘惑) Book 豚の死なない日 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

著者:ロバート・ニュートン・ペック,金原 瑞人,Robert Newton Peck
販売元:白水社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

アメリカ、ヴァーモント州、
シェーカー教徒の家庭に生まれた、
少年の成長を描いています。

少年の父の職業は、豚を殺し、捌くことです。
懸命に働く「寡黙で穏やか」な父。
少年は、シェーカー教の厳しさに戸惑い、
貧しさに反感を抱きつつも、
父に憧れ、成長していきます。


質実の民(p139)」シェーカー教徒である彼らは、
『フリル』を、つまり、なくてもすむもの(p28)」を持たない。
一方で、
やらなければならないこと(p159)」は、断固としてやる。
それがどんなに残酷に見えようとも…。

やらなければならないことはできず、
『フリル』が逆に主役になっているような生活を、
反省させられました。


ちなみにシェーカー教とは、あとがきによれば、
クエーカー教徒だったマザー・アン・リーによって開かれたキリスト教の一派。
「手は仕事に、心は神に」という言葉に象徴されるように、労働でもって神に仕えることを最高の喜びとした(p173)」とあります。

短い本ですが(171ページ)、強烈な印象でした。
続編も、ぜひ読みたいと思います。

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